1.開場から「強い気持ち・強い愛」まで
2024年8月31日、小沢健二の「LIFE30周年再現ライブ」に行ってきた。2018年の「春空虹」の最終公演以来の武道館である。今回はセンターステージであることが予告されていたので、自分の席からステージがどのように見えるのか、まったく予想できないまま入場することになった。席について見てみると、黒く大きなステージが三段に積み重なっていて、自分の座席(北西1階)から見える位置にはほとんど楽器は並んでいない。ステージ左側にたぶん小竹満里さんが使うクラシック・パーカッションが見え、ステージの向こうにハープの先端が見えたので、演奏者の多くは反対側に並んでいるのだろうと推測できた。どうやら小沢のお尻を眺めることになりそうではあるが、彼が立つはずの最上段には多方向にマイクのスタンドが立っていたので、いろいろ方向を変えて歌ってくれるのだろうとも思った。
座席には、小沢が歌詞を書いて送信するときに使ったとおぼしきFAXのコピーが置いてある。30年前から現在に届いたFAXということなのだろう。
雨は降っていなかったのだが、やたら湿気が高く汗まみれになってしまったブギバ大学Tシャツ(友達からもらったもの)をトイレで着替え、襟付きのシャツにモノクロマティックのネクタイを締める。これで準備万端。
観客の入場にかなり時間がかかったせいか、予定よりかなり遅れて始まったように思う。武道館にたどり着けない人が続出して空席が目立つのではと危惧していたが、9割以上埋まっている。回り道したり当日の朝決断してここまでたどり着いたり、あるいは参加を断念した人に譲ってもらった人も多いのだろう。そんな人たちが沸き上がる中、「台所は毎日の巡礼」のラップ部分で幕を開けた。それに続き、「流れ星ビバップ」の前奏に合わせて、小沢が演者を呼び込む。名前を呼び、「よおーっ」で一拍手を打つ。演者は自転車で入場してきているようだったが、自分のところからはあまりよく見えなかった。
1曲目はそのまま「流れ星ビバップ」。スマートフォンにダウンロードするよう要求されていた、提灯の写真に歌詞が書いてあった曲なので、クライマックスで演奏されるかと思っていたのだが、まさかの導入の曲だった。その写真を掲げながら、歌を聴き、歌う。
演奏が始まってすぐに、音のバランスのよさに気づいた。ライブ会場ではどこに座るかによって音の聴こえ方が変わるけれど、今回の席はベースとドラムが大きなステージの向こう側にあるせいか、それらからの直撃音が届かない。響く重低音が好きな人には物足りないかもしれないが、私はストリングスの音が大好きなので、それらとベース・ドラムが適度に混ぜ合わされたアレンジの細部まで聴き取れる今回の席は大当たりだった(ちなみに私から見て正面の位置にいたのは、スチャダラパーのシンコ、スカパラホーンズ、そしてコーラスの子どもたち。左手に小竹さん、右手にオーケストラ。指揮をする服部さんはギリギリ見えた)。
続いて「フクロウの声が聴こえる」と「強い気持ち・強い愛」と、スーパーヘビー級の曲が立て続けに演奏される。これらの曲、特に「強気強愛」は、ライブで聴くといつも、足元でいくつも大玉の花火が炸裂するような爆発力、目を開けていることができなくなるようなまぶしさを感じる。しかし今回は低音が控えめでストリングスの奔流に身を任せる感じの演奏なので、同じまぶしさでも、もっと柔らかく、遠くまで見透かせる澄んだ光のまぶしさのようだった。しかしそれでも、ストリングスの間奏を挟んで「長い階段をのぼり」から「本当だよね」までを2回も合唱させられると、気持ちが高揚して完全にレッドゾーンに突入してしまう(私は最近のライブでは、この「強い気持ち・強い愛」と「いちょう並木のセレナーデ」を会場のみんなで歌う瞬間がとても好きなのだが、それについてはまた後で)。
コメントをお書きください